こんにちは。
新潟のラ・プリエールです。
今日はとても長文となっておりますが、ご興味のある方は是非読んでみてください。
突然ですけど、終活には限界があります。
生前の準備は万能なものではなく、100%形にできることもあれば50%しか形にできない時もあります。
せっかく取り組んだ終活も、やり方によっては
「最悪なトラブルを避けるだけ」
にとどまるケースもあります。
大きな理由は2つあって、
1つは、
「人が亡くなった(=戸籍がなくなる)後には、様々な社会的な取り決めがあるから」
もう1つは、
「いつ迎えるか分からないことにしっかり準備をすることの難しさ」
です。
1つめの「社会的な取り決め」とは、いわゆる法律のことです。
たとえば、
・誰が(死亡届けの)届出人になるのか
・相続人はいるのか
・死後事務(葬儀、相続など)は誰が担うのか
・その費用は誰が払うのか
これらに関しては権限者や義務者が法律ではっきりと定められています。
僕が仕事をさせていただいているなかで、
死亡届を届け出る資格を持った人がいないケースがあったり、
相続人の有無や、いた場合にはどこに、何人いるのかを調べなくてはいけなかったり、
死後事務の義務者である親族から対応を断られたとか、
そのうえ故人様にお金がなかったとか。
もし、届出人の資格を持つ人がいなかった場合はどうなると思いますか?
火葬後のその人の残したものはどうなると思いますか?
もし、届出人はいたけど費用がなかったらどうなると思いますか?
もし、届出人が親族や相続人でなく後見人や院長、施設長、大家さんだったらどうなると思いますか?
御骨は誰が供養すると思いますか?
人が亡くなった時に、その後の手続きや資産(負債)はすべて法律で管理されます。
そして法律で管理された以上、権限のない人がそこに直接関わることはできません。
「生前から決めてあった」
といっても、資格がない人が届出人になったり、資産を自由に分割したりできるということはないのです。
たとえばエンディングノートや遺言書ですが、エンディングノートはあくまで任意の書式ですから、法的な効力はないです。
遺言書も書き方を間違えれば効力を持ちませんし、そうならないために公正証書遺言の作成を依頼すれば、それなりの費用が掛かります。
こうしたことから、自分の意思を残すにも、死後事務を行うにも、誰でも簡単にできることではないということが分かっていただけるかと思います。
2つめの
「生前に準備をすることの難しさ」
とは、相続人や親族の関係性が悪くなるかもしれないということです。
先ほど人は亡くなった後に法律に管理されると言いましたが、
たとえばその法律に基づいて相続が法的に問題なく完了したとして、
はたしてそれが相続人や親族の納得いくものかどうかというのは別の問題です。
たとえば相続人の構成(親子関係や家族関係など)で、主張の弱い相続人と主張の強い相続人がいたとします。
主張の弱い相続人が第一相続人だった場合、その人からみればうまくいったように感じられることも、第二相続人である主張の強い相続人からみれば納得できないことがあるかもしれません。
逆に、主張の強い相続人が第一相続人だった場合、第二相続人である主張の弱い相続人からみれば納得がいかない相続になる可能性もあるわけです。
また、遺言書で親族ではない第三者が第一相続人相当に指定されていた場合には、トラブルの予感しか感じませんよね。
こうしたことから、いくら生前に計画をしても
「その後関わる人すべてに100%本人の意思を反映させるのはなかなか難しい」
ことが分かると思います。
少し言い方は悪いですが、
「亡くなる本人はそれでよかったとしても残された人にはどう受け取られるか分かりませんよ」
ということです。
僕はよく
「葬儀とは誰のためのものなのか」
と考えます。
逝く本人のためなのか
残された人のものなのか
両方のためのものなのか。
僕の経験上、葬儀を担当させていただいたご家族それぞれにその家族だけの問題があり、
その内容も行動に移すタイミングも、解決方法も、すべてバラバラです。
言ってみれば、ランダムで問題を投げ掛けられるようなものです。
終活を行って生前から準備をしてもそのすべてがうまくいくとは限らないわけですから、本当は
「エンディングノートや遺言書で安心の終活を」
なんて言ってはいけないと思うんです。
僕の考える終活とは、
「必要最低限の準備」
と
「適切な事後対応」
です。
そのために必要なことは
「依頼者様との信頼関係の構築」
だと思っています。
なぜ準備が必要最低限なのかというと、
複数のランダムな問題に対して緻密な準備をしようとすると、手間もお金も掛かってしまうからです。
ですから、
生前は正確な現状の把握と大まかな枠組みだけ決めておけばいいと思っています。
(もちろん緊急性のある場合はすぐ対応するなり専門職に引き継ぎます)
そして、いざその時になったらその大まかに決めた枠組みに沿って適切に事後対応を進めればいいのです。
事前に正確な状況さえ把握していれば、対応はそれほど難しくはないです。
ですから、そのために必要なことが信頼関係の構築であり、
信頼を築くためには社会的な責任を負えることが大切だと思っています。
僕はあくまで葬儀職なので、様々な面でできることとできないことがあります。
世の中には独占業務というものがあり、国家資格がなくては携わることのできない業務がたくさんあります。
その垣根を越えて関わってしまったら越権行為になってしまいますし、まして報酬など受け取ったら違法になってしまうわけです。
僕の信条として、自分の専門外のことは必ず専門職に相談し、場合によってはすぐ引き継ぎをすることがが社会的な責任だと思っています。
曖昧な知識で適当な対応をして報酬を受け取れたらどんなに楽かなと思うこともありますが、
結果を出せなかったら依頼者様に失礼ですし、
むしろ事態を悪化させてしまったとなれば大問題です。
自分で責任をとれないことはできません。
正義感や使命感だけでは困った人の役に立てないと思うのです。
このように、終活は時代に沿っていて成長産業だと思われるかもしれないですけど、実際はまだまだ整備が必要な業界です。
収益にならないことも多いですし、簡単に考えて参入してくる人も多いです。
少数派かもしれませんが、地道に実践と実績を積み重ねることがこうした問題を減らす一番の近道だと僕は思っています。
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